ライフコース・built environmentと健康

こんにちは。ささやんです。

先日、第79回公衆衛生学会にオンラインで参加させていただきました。

公衆衛生分野に関しては数年前から関心を持ち始めました。
きっかけとしては、やはり慢性疼痛の患者さんとの関わりの中で「心理-社会的要因」の重要性に気づかされ、そこについて勉強を深めていきたいと思ったことです。

慢性疼痛は家族構成や仕事、補償や起訴の状況など社会的要因が影響することが慢性疼痛ガイドラインにも掲載されています。簡単に言うと、様々な社会背景の中で心理的にうつ状態になることで脳の変化が起こり、痛みを感じやすい状態が続いてしまっていたり、また疾病利得など社会システムの中で「痛みのある患者」と言う役割でバランスを取ってしまっているというようなイメージです。

私も理学療法士として臨床をしている中で高齢者の「孤立」が一つの要因となって痛みを慢性化させているのではないだろうか?そんな仮説を立てて小規模ですが研究をしたことがあります。その研究は昨年、第6回日本予防理学療法学会で「慢性疼痛を有する地域在住高齢者の社会的孤立と心理的要因の関係」というタイトルで発表しました。横断研究なので因果関係までは分かりませんが、社会的孤立の状況にある高齢者の方が痛みに関わる破局的思考や不安、うつなどのスコアが有意に高かったという傾向がみられました。

 

また私自身がNPOでの活動などで重点を置いている「子どもの孤立を防ぐ」というのも、きっかけは慢性疼痛に関する勉強であったかもしれません。
幼少期の養育環境や愛着障害などが慢性疼痛の発症に関係することは九州大学の細井先生をはじめ、少しずつ研究報告が増えはじめているところです。
慢性疼痛難治例に対する段階的心身医学的治療

このように、様々な社会背景が「慢性疼痛」に影響を与えていること。そしてそれは慢性疼痛に対してのみならず、人々の健康に大きく影響を与えているということ。そういったことを知ったのがきっかけで、より深く勉強していきたいと感じ公衆衛生分野、社会医学分野に関心を持ちはじめたところです。

これまでにこのブログでもSocial Determinants of Health(健康の社会決定要因)に関する記事(健康の社会決定要因と貧困問題〜健康は自己責任ではない!)も書きましたが、このSDHの領域に対して非常に関心があります。

公衆衛生学会では千葉大の近藤克則先生の講義も聴講しましたが、改めて考えさせられることが多々あり、「0次予防」や「まちづくり」など、今後は社会環境の整備に関わっていきたいなぁと聴講を聞き終えて強く感じたました。

近藤先生のお話の中で、都市部と郊外の高齢者を比較した興味深い研究のお話がありました。都市部の高齢者の方が、郊外の高齢者と比べてIADL(日常生活動作能力)が高かったり、また社会参加する人が多い地域の方がフレイル(心身の脆弱性)や物忘れ(認知症の初期段階)のある人が少ないとのデータがあります。

なぜそのような結果になるのかと言うと、やはり都市部の方が車に乗らずに公共交通機関を使った移動(歩く時間)が多くなったり、また人口も多いので社会参加の選択肢も多いことが一つの要因になっているのではないでしょうか。

どんな街に住んでいるのか?によって、人々の健康が決まってしまう側面があるということ。公園が近くにある人ほど運動頻度が1.2倍高いというような報告もあり、Built environment(建造環境)を含めた都市計画が人々の健康に大きな影響を与えているのです。

これは高齢者の歩行時間だけに語られるものではありません。
以前も幼少期の貧困問題に関しては記事(子どもの貧困と健康格差について考える〜生まれた時から子どもの健康は決まってしまうのか?〜)にしていますが、今回の近藤先生の話の中でも幼少期からの環境の話(ライフコース)がいくつか出てきていました。

・出生時体重が低いと糖尿病のリスクが高くなる(インスリン感受性のセットポイントが変わってしまう)
・幼少期に虐待を受けていた人ほど、高齢期における医療費が高くなる
・15歳時点で貧困状況にあった人ほど、高齢期での野菜摂取量が少ない(特に戦前の給食普及前の世代に顕著)

給食の普及後からは日本人の栄養状態が平均的に高まったというデータがあります。これはまさに政策によるポピュレーションアプローチによって平均が推移したことの賜物です。環境の変化を起こすことで人々の健康に寄与したという代表的な事例です。

このように「都市計画」や「政策」などは、多くの人の健康状態に多大に影響を及ぼします。それらは決して医療福祉に関わる政策だけではなく、都市計画や貧困対策など、多岐に渡る社会環境が健康に影響しているということ。

私自身も6年前にリハ医の酒匂先生のまちづくりに関するお話を聞いて以来、「まちづくり」に関わっていきたいなと考えていましたが、今回の公衆衛生学会を聴講して改めてその想いが強くなりました。健康・医療・福祉のまちづくり推進ガイドライン「居心地が良く、歩きたくなる」まちなかづくりなどに目を通しても、「こういうことに関わりたい!」と強く思うわけです。

それと同時に、こういった都市計画や政策に関わるのであれば、一からしっかり公衆衛生について学びながらMPHなど権威も必要だと思いますし、公衆衛生大学院への進学なども選択肢として改めて考え直しています(お金も時間も知能も足りていませんが・・・)

正統なルートでまちづくりに関わるにはそのような経緯から国や地方公共団体における関わりでしょうが、現在のNPOの活動のように小さな地域の実践者の立場からまちづくりに関わることも大切ですし、それは引き続き行っていきたいですし、そういった活動をより勢力的に強化して、地域活動の実践者の立場から積極的に発言していくことも行っていきたいなと思います。

どちらにしても、公衆衛生の勉強は必須。大学院に行くかはまだわかりませんが、その選択肢を持てるように英語の勉強と統計学の勉強を中心に、コツコツと1から勉強していきます。あとお金稼ぎの仕組みづくりも。。

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