孤立〜健康への害〜

「健康」
そんな言葉から連想されるイメージは「規則正しい生活」と言ったものではないだろうか。

食事、睡眠、運動

もちろんどれも大切な要素である。けれども最も大切な要素を見落としてはいけない。

人間は社会的な生き物であるということ。

集団行動をし、役割分担をしながら社会を形成して生きていく。
生まれた瞬間から、多くの人は家族という単位に属して生きている。人は一人では生きていけない。生まれた環境によっては養子であったり施設という環境もあるだろうけれど、人との関わりの中で生きていることを考えれば、それは家族と近いものでもある。必ず人間関係の中で育っていくのだ。

大人になるにつれて、家族関係が希薄化する場合もあるだろう。友人関係や職場の人間関係の方が深い関わりになることも少なくない。

いずれにせよ、人は「関係」の中で生きているのである。

 

そして人の「健康」というものを考える時、「身体」や「心」は直接的な要素であることは誰もが容易に想像できる。そしてまた「社会」という観点も切っても切り離せない要素なのである。
専門的には「社会的要因」が「健康」にどれほど影響するかを言われ始めて久しい。しかし一般的にはまだまだその重要性は認知されていない。

 

人が社会的な生き物であることを考えれば、その影響がどれほど心身に強く関係するかは想像できるだろう。孤立感がどれだけ心身を蝕むかというのは、病気になって1週間も仕事や学校を休めば感じることではないだろうか。

僕自身も一昨年肺炎になり5日間ほど仕事を休んだことがある。社会的な役割がなくなった瞬間。たった5日間ではあったけれど、身体の回復とともに精神的に病みかかっていったのは今でもすぐに思い出せる。

 

働き盛りの人はもちろん、高齢者においても社会的な孤立は重要な問題である。

人との関わりの少なくなる孤立は、外出機会を奪い運動量を減らす。また心の拠り所、安心感、自己肯定感を減退させるものかもしれない。どちらが先にあるかは分からないが、肉体的問題、心理的問題と社会的問題は相互に深く影響しあっていると言われる。

社会的ネットワークと死亡率との関連を明確に示した先駆的研究としては、BreslowとBerkmanが1983年に出した研究が有名である。

その研究調査によると、社会的孤立は各健康関連要因(飲酒、喫煙、肥満など)と独立して約2倍以上の死亡率があるという結果であったという。つまり、飲酒や喫煙、肥満以上に「孤立」は死亡率を高めるということである。

 

その後も社会的ネットワークに関する研究は実施されており、La Veistらが1997年に報告した研究では、55歳から96歳の黒人女性を対象に5年間の追跡調査をした結果、孤立している者は孤立していない者と比べて死亡率が約3倍であると見出されている。

 

また死亡率以外にも幾つかの報告があり、血圧との関連、過度の飲酒行動との関連、首や背中の慢性的な痛みの罹患率との関連などが見出されているという。

 

近年では「フレイル」という概念も言われ始めてきた。これは東洋医学でいう「未病」と同じような概念である。

フレイルとは高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転機に陥りやすい状態のことと定義されている。そして何より重要なポイントは「適切な介入をすれば、再び健常な状態に戻る可逆性がある」ということである。

フレイルは主に「身体的フレイル」「心理的フレイル」「社会的フレイル」に大別される。
身体的フレイルには筋力低下や低栄養状態が、心理的フレイルには鬱状態などが、そして社会的フレイルには孤立などが問題視されている。

このフレイルに関係する研究でも多くの興味深い報告がなされている。
ザックリ紹介すると、社会的フレイル(孤立)があると認知症の発症リスク、要介護発生リスク、生活機能低下リスク、抑うつリスク、自殺リスク、早期死亡リスク、心疾患・脳卒中の発症リスク、身体的健康状態の悪化、主観的幸福度の低下などが高まるということ。

 

何が言いたいかというと、人間の「健康」とか「予防」という観点で考えた時には「運動しましょう!」「食事に気をつけましょう!」というのも大切でありその通りなのだけど、人と交流しましょう!というのがめちゃくちゃ大切!!ということ。

 

高齢者は同居者以外との交流が対面・非対面合わせて週1回未満になると、その後の要介護や認知症のリスクが高くなり、さらに月1回未満になると早期死亡のリスクも高まるとの報告がある。

また退職した人は仕事を継続している人に比べ、メンタルヘルスや高次生活機能が悪化しやすい。 高齢者で月1回以上ボランティア活動に参加している人で生活機能は維持されやすく、月1回未満では関連性が認められていない。 という報告もある。

そんなことから、東京都健康長寿医療センター研究所が作成した、健康長寿ガイドラインでは「1日1回以上は外出しよう。週1回以上は友人や知人などと交流しよう。そして、月1回以上は楽しさ、やりがいのある活動に参加しよう」という目標を掲げている。

 

これらの知見がもっと一般的に広まることで、今後の高齢者の活動の場というのも色々と広がりを見せていくのではないかと思う。

そしてまた、高齢者のみならず若年で「孤立」を感じている人にも同様のことがいえるのではないだろうか。

「活躍できる場」
「社会との接点」

人の「健康」を考えた時にできること。
場づくりは僕の人生で今後のキーになっていくだろう。

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