背骨の支持機能と乳児期からの発達

整形外科で働き始めて10年以上が経過した。
老若男女、多くの患者さんたちの身体を診させていただき、机上では知りえない多くの人体のことを知ることができたように思う。と言っても人間の体は宇宙のように神秘的であり、分からない現象の方が圧倒的に多いのですが・・・

身体を痛めたり、不調が出ている人の特徴として多いのが「脊柱支持機能」の低下である。これはつまり、背骨を支える筋力の弱さである。背骨は人間が進化の過程で二足歩行になったことによって重力に対して垂直に身体を起こす必要性が出てきた。他の動物たちと異なる、人間の人間たる所以と言える機能のひとつである。

さて、この背骨を支える機能というやつなのだけど、その機能を考えようとすれば「いつからヒトは背骨をまっすぐに立てれるのか?」という問いが生まれることは必然だろう。そして答えはもちろん「乳児期」である。寝ているだけであった赤ちゃんが、お座りができるようになり、立てるようになり、二足歩行ができるようになる。その過程に「背骨をまっすぐ立てて支える」ための発達が盛り込まれているのだ。

「お座りができるようになる」ために、赤ちゃんはどんな機能の発達を行われているのか?
「歩けるようになる」ために赤ちゃんはどのように身体を段階的に使っているのだろうか?

発達には基本的には順番があります。このへんは理学療法士の国家試験にも出るところなのですが、だいたい3か月くらいには首が据わってうつ伏せで頭を起こせるようになる。5〜6か月では寝返りが出来たり手のひらで身体を持ち上げることができるようになる。8〜9か月で安定したおすわりができたりハイハイができる。だいたい12か月ほどで立って歩き始めるというのが、教科書的な発達の目安なのです。

そう考えると、一つの機能を獲得するには、それができるための「前提となる機能」の獲得が必要なのかもしれない。いや、正確に言うと前提となる機能が獲得できていなかったり、機能的に弱かったとしても次の動作を獲得していくことはできるのだけれど・・その動作には何らかの弱さが見られるものである。

そしてその「弱さ」を代償しながら動き続けて大人になっていった結果、身体のどこかに無理がかかり不調をきたすことがある。そんな患者さんを多く経験してきたのである。

 

乳児期の発達に伴う運動は、人の身体の健康を考えた際にはヒントが溢れている。
うつ伏せ・四つ這い・寝返り。
なんともない動きも、自分の身体の癖に注意を向けながら行えば、非常に難易度の高い運動であることは多くの患者さんが実感されている(無論僕も)

そう考えると、現代社会に蔓延する育児便利グッズとも言われる「インサート付きの抱っこ紐」とか「早期からおすわりさせられる椅子」とかは、赤ちゃんの発達を大きく阻害するアイテムである。こうした社会に潜むちょっとした落とし穴。わかった上でうまく使うのと、何も知らずに常用するのとではわけが違う。

なので僕は、その知識や情報というのも発信を続けていきたいと思う。
まぁ普通の啓蒙では他にもやっている人がいるから、少し変化球で届ける工夫をしながら。

 

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