整形外科クリニックでの臨床雑記①

僕は理学療法士として働き始めて11年目になりますが、これまでずっと整形外科クリニックで勤めてきた。1か所目は横浜にあるクリニック。そしてその法人内で立ち上げも含め4か所のクリニックを経験してから現在の都内のクリニックに移った。

新卒では病院に就職する人が多い中、なぜクリニックに就職したか?その理由は、学生の時に以下の2つのことに関心があったから。

・痛みを抱えながらも競技を続けているスポーツ障害のアスリートや学生と関わりたい
・その場で痛みを良くできる技術を手に入れたい。「あそこに行けばなんとかなる」と言われるような治療家になりたい

スポーツ障害は休めば良くなるけど、復帰すると痛みが再発する。そんなイメージがあったけれど、動き方から変えることができれば痛みなく競技を続けられるのではないか。

また自分自身も昔からカイロやオステオパシーの治療院でお世話になっており、「あそこに行けばんなんとかなる」と思える治療院があったことは肉体的にも精神的にも頼りになる支えであった。

自分もそんな存在になりたい。そういった動機から「自宅復帰」を目指した病院でのリハビリテーション現場ではなく、生活はできているけれど「痛み」に悩まされている患者さんとの関わりが多い外来整形に就職した。もともと養成校に入った動機もやはりスポーツに関わりたいという思いがあったからであるし、実際にクリニックで働き始めたと同時に高校バスケ部でのトレーナー活動も開始した。

ちょうどその当時は入谷先生や福井先生、山口先生など元昭和大藤が丘病院の先生方の影響もあり「運動連鎖」が流行っていた。また「結果を出す」という言葉が多く飛び交っていたように思う。僕自身も実習先ではインソールなどをしている施設だったので、新人の頃からインソールを作れるようになるということも目標であったし、資格を取ったら徹底的に運動連鎖について学びたいと考えていた。

動作の中で痛みが出ている患者さんがいた場合、その動作を変えることで即座に痛みが解消される。という場面は何度も実習中に目の当たりにしていた。運動連鎖を考慮し、患部から離れた部位へのアプローチで変化するのである。

「これはすごい技術!!」

当時の僕は即時的に症状を解消できるその技術に心を奪われた。
毎週のように勉強会へ行き、書籍を読み込み、臨床で実践してきた。

愛読したのは「理学療法」に連載されていた「関節病態運動学シリーズ」や「整形外科理学療法の理論と技術」などを中心に全身と局所との関係を学ぶことを徹底していた。
今思えば、局所を少し蔑ろにしていた部分もあったかもしれないけれど、関節病態運動学シリーズを新人時代に読み込んだのは財産になったなぁと感じる。

勉強してきたことを実践する。確かにその場での即時的な変化は起きた。
しかしながら即時的な変化は、あくまで一時的なもののように思えた。

「戻る」という現象は時系列を考えると有りえないのだけど、「戻る」という表現が適切だと感じるほど、次回来院時には介入前と同じような状態で来られる患者さんも少なくなかった。

そんなことを繰り返している中で自問自答した。
「運動連鎖を考慮してアプローチしているけれど、このアプローチは原因を解決しているのか?」
「相手の体を見ているようで、実は運動連鎖という考えに当てはめて誘導しているだけではないのか?」
「そもそもなぜ、歩き方が悪いのに痛くない人もいたり、姿勢が良いのに痛い人もいるのだろうか?」

そんな疑問が頭に浮かんだのである。

僕がしているアプローチは「治療」なのか「誘導」なのか。

患者さんは「治っている」のか「一時的に変化した」のか。

自分の行っていることに対しての問いを持つと、今の自分のしているアプローチは本質的ではなく、患者さん個々の生活背景やこれまでの歴史を考慮したものでもなく、アプローチも単調であったように思えた。この延長に自分の目指していた「治療家像」はなかった。

「これだ!!」と思い、情熱を注いできた運動連鎖やバイオメカニクス的な考え方。しかし今となっては当たり前であるのだけれど、何にでも適応と限界がある。その考え方で問題が解決される人もいれば、解決されない人もいるのである。

情熱を注ぎつつもモヤモヤを抱えたまま、職場に先輩がいない中で1年の月日が経った。(僕が最初に入職した職場は、入職1週間後に先輩が家庭の事情で辞めてしまい新卒2人だけの職場になるという事態となったいたのだった)

そして当時5年目くらいであったセラピストが職場に新たに加わった。
その先輩との出会いが、僕のこれまでの固定観念を打ち崩してくれて、新たなフレームを与えてくれるきっかけになった。いわゆるパラダイムシフトというやつである。

 

その2に続く

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