理学療法士としての振り返り〜コミュニティという概念からのアプローチ〜

前回の記事で僕は「情報が人間を変える。それは意識が人間を変えるということ」だと気づいたと書きました。だから「場という情報も人間を変えられるのではないか?」と考えるようになったと。

まぁこんな抽象的な話はどうでもいいので、今日はもう少し臨床に沿った具体的な話をしていこうと思います。

「なぜ僕が場づくりをしようと思ったのか?」の第2弾です。

問題の階層

僕が「治療家になる」という当初の想いから目的地を変更し、現在は治療よりも「場づくり」に注力している理由。それは前回書いたような書籍などからの妄想だけでなく、やはり臨床での患者さんから具体的に気付かされたことが沢山あります。

ヒトの症状には様々な要因がある。例えば大腿四頭筋が弱いとか、足のアーチが潰れているとか、股関節の可動域制限があるとか・・・

それは確かにそうであり、実際にそう言った身体の問題点を解消するようなアプローチをすることで改善が見られる場合も少なくありません。

しかし改善が見られない場合も少なくないのです。これは一体どういうことなのか?

僕が勤めているような外来整形、特にペインクリニックを持つような病院では慢性疼痛で心理社会的要因が多大に影響している人もいる。これはつまり、不安や鬱などが脳機能に影響を与え、痛みを感じ続けさせてしまうような悪循環が出来上がっているケースのことでもある。

こういた患者さんに「股関節の可動域が〜」と言ってアプローチしたところで効果は期待できない。脳自体の問題があり、その背景には心理社会的要因が大きく影響しているためである。

そのため心理面・社会面を考えなければ、この患者さんの痛みはなかなか解決できないのである。

僕はこう言った知識も勉強しながら、慢性疼痛に苦しむ患者さんを担当していた。よく顔を見て、よく声を聴き、会話をする。するとなんとも言えない主観的なものであるが「この患者さんには社会的な役割が必要なのだろう」とわかった。根拠はない。だけれども話をしていると分かるものだろう。

しかし病院に勤めて医療保険の枠内における理学療法士と患者さんという関係である以上、それ以上のアプローチ(関わり)は持てない。そんなことに不甲斐なさを感じたのもまた「社会的役割づくり」「居場所づくり」といった、従来の治療アプローチとは異なる階層から関わろうと決めた一つの理由である。

「従来のアプローチとは異なる階層」と書いたけれど、それは一体どういうことなのか?

それは「そのヒト」を捉えるときに、見方には様々な階層があるよということ。

階層

この図に示しているようなイメージ。

例えば「ささやん」という個人が何か痛みを抱えていたとする。この痛みに対して最下層のオレンジ色の部分、細分化された視点から見れば「関節の動きが悪いのが問題です」とか「食事が乱れていて自律神経バランスが崩れているのが問題です」などと、様々な「それっぽいこと」が言えるだろう。専門家の弱みというのはまさにこれであり、その階層の枠の中では「それっぽいこと」は言えるのだけれど・・・そもそもその階層の話なのか?というツッコミを入れる必要があるのである。

「ささやん」の身体を細分化して見ていくと「ささやんの筋肉」があり「ささやんの神経」があり「ささやんの細胞」があり「ささやんのDNA」がある。

では逆にささやんを構成するより統合的な階層ではどうだろうか?

例えば「コミュニティ」とか「空間」という階層。その階層で見れば「理学療法士としてのささやん」とか「〇〇クリニックのスタッフとしてのささやん」または「家庭内で父親としてのささやん」などなど、様々なささやんがいることが分かります。

こういった所属コミュニティというのも「そのヒト」を構成する大切な因子であり、「そのヒト」が抱える痛みや問題などにもろに直接影響するのは想像に難しくないでしょう。

家庭内で問題があっても、職場の人間関係に悩みがあっても、理学療法士という職業に不安を持っていたとしても、それらは必ず「ささやん」に影響するわけですよね。

これと同じことが、より統合的で広い概念である「国家」とか「人類」とか「霊長類」とか「この地球」にも言えるわけです。

「ささやんの細胞」が変わっても太郎くんは変わらないけれど

「地球」や「日本」が変われば、ささやんも太郎くんも変わる。階層の違いというのはそういうものなのです。

コミュニティが変われば個人は変わる

ということで、僕は小さなコミュニティというものには非常に可能性があると考えている。

例え小さなものであっても、とある個人にとっては非常に影響のあるコミュニティであればその存在は人の健康を支えてくれるものにもなりうると信じている。

そして先ほど言ったように、コミュニティなどの統合的なものの方が、より広く影響を与えられる可能性があるわけである(政治や世界経済などが与える影響って広範囲で個人にも大きいですよね)

僕は現時点では政治家になりたいとは考えていない(今後どうなるかわかりませんが、自由気ままにやりたい人間なので政治家になりたいとは思わないだろう)

だけど「そのヒト」の健康というものを考えた際に、政治は非常に大切な要点であり問題意識を持って向き合い続ける必要もあるだろう。

そして国家レベルではなく、世界レベルでの問題意識の共有。

画像2

2015年にはSDGs(エスディージーズ)という持続可能な開発目標が2030年までの国際社会共通の目標として定められた。

つまりういった項目に挙げられている要素に着目しつつ、地球が変われば「そのヒト」は変わるということに繋がるのだと思う。非常に素晴らしい目標でもあると思う。

しかし僕ら個人にできることって、もっと小さなことでいい。「世界から貧困をなくそう」なんて言われても、イメージできない。

だから僕は医療保険の枠の中では「目の前の患者さん」という個人に焦点を当てて関わっていきたいし、また保険という枠の外では「まち」に焦点を当てて、過ごしやすくて幸せに暮らせるようなまちづくり、コミュニティづくり、空間づくりをしていきたいと考えている。

少しでも、良い影響を生み出せるように社会と関わっていきたいものです。

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